キャッツ粉飾決算事件の再審請求について

2021/02/13 細野祐二

私は、株式会社キャッツの平成14年度の財務諸表における重要な事項の虚偽記載の共謀容疑により、平成16年3月9日、東京地検特捜部により逮捕され、190日間の勾留の後、平成18年3月24日、東京地方裁判所より有罪の言渡しを受け、平成19年7月11日、東京高等裁判所より控訴棄却の判決を宣告され、平成22年5月31日、最高裁判所より上告棄却の決定を受け、その後、刑が確定した者です。この結果、私は、日本公認会計士協会より登録抹消処分を受け、公認会計士資格を失っています。

事件に対する私の一貫した主張は、「私は、キャッツの経営陣と共謀などしていないが、共謀以前に、問題とされる財務諸表は会計基準に従った適正なものであり、適正な財務諸表を指導するのは共謀とは言わない。」というものです。原判決は、キャッツの平成14年6月中間期の中間貸借対照表、並びに、同年12月期の貸借対照表に重要な事項の虚偽記載を認定していますが、それがなぜ重要な事項の虚偽記載となるのか、その会計基準上の根拠を全く示していません。

もとより、公認会計士は粉飾決算の発見防止を社会から負託され、それを業としているのですから、財務諸表が粉飾であれば、その財務諸表に適正意見を表明した公認会計士は何を言っても免責されません。しかし、問題とされたキャッツの財務諸表は、会計基準に準拠した適正なものなのです。

私は、原判決に納得することができませんでしたが、だからといって、今まで再審請求を行うことはありませんでした。なぜなら、再審請求は、現行刑事訴訟法上、無罪を言い渡すべき明白性のある新規証拠が必要とされるところ、粉飾決算事件にはそもそも物証が存在しないので、その中で、無罪を言い渡すべき明白な新規証拠など出てくるわけがないと考えていたからです。また、いまさら再審無罪となったところで、亡くなった妻や失われた時間が戻るわけではなく、私は、再審請求に係る労苦に比して再審無罪の利益を多く感じなかったからでもあります。

そうしたところ、令和2年の2月から4月にかけて、私が主催した国際司法裏コングレスの関係で立命館大学の松宮孝明教授に何度かお会いする機会があり、その際に、キャッツ粉飾決算事件を説明することがありました。私の説明を聞いて、松宮教授は、
「長銀・日債銀事件の最高裁判決の結果、会計基準の誤適用は明らかな再審請求事由となる。長銀・日債銀事件では財務諸表の虚偽記載の判断基準がその時点で公正妥当と認められていた会計基準にあることを判示したが、もともと粉飾決算の判断基準は会計基準とすべきであった。」
として、私に再審請求を行うよう勧めてくれたのです。

また、このころ、本屋で刑事訴訟法の文献を探していたところ、刑事訴訟法の教科書にキャッツ粉飾決算事件が解説されていることが分かり、私は驚愕しました。問題とされたキャッツの財務諸表は会計基準上適正なものであり、適正な財務諸表を虚偽記載とする原判決は間違っているのです。

誤った原判決を歴史に残してはなりません。私は、本件再審請求を行うこととし、再審の準備を1年近く続けてきましたが、今般、会計鑑定意見書をはじめとする新証拠も一通り揃い、弘中惇一郎弁護団のもと満を持して再審請求を行うこととなりました。引き続きご支援いただきますようお願い申し上げる次第です。